マンションで防音リフォームするベストな方法とは?
- 公開日
- 更新日
戸建てよりもマンションのほうがトラブルになりやすい、“音問題”。屋外の騒音が気になる方、趣味や仕事で音を扱う方など、部屋の防音性が気になるところですよね。ストレスを溜める前に、苦情に発展する前に、リフォームで防音対策をしてみませんか。
今回は防音対策に詳しい、「M LIFE株式会社」代表取締役で宅地建物取引士の遠藤麻生実さんにお話を伺いました。国立音楽大学出身で演奏者だったご自身の経験を踏まえ、楽器演奏可能な物件の紹介や防音物件のコンサルティングなどを行っています。そんな遠藤さんと一緒にマンションで防音リフォームするベストな方法を見つけたいと思います。
M LIFE株式会社 代表取締役、宅地建物取引士 遠藤 麻生実
国立音楽大学出身。※弦管打楽器専修 ホルン専攻卒業
在学時、音楽家のお部屋探しに懸念を抱き、卒業後不動産業界へ。
音楽と不動産の橋渡しができる人物を志し、複数の不動産会社での勤務を経て、2016年に「M LIFE株式会社」を設立。開業後は、音大生や音楽家、趣味で音楽を嗜む社会人、楽器可物件をお持ちのオーナー様など、幅広い方の相談に対応。音楽と不動産双方のプロとして、楽器演奏可能物件の紹介や募集受託、防音物件に関するコンサルティング等、顧客に寄り添った提案を行っている。
目次
防音リノベの工法・特徴・費用
――一般的に「防音対策」とはどういったものなのでしょうか。
「基本的な防音対策としては、屋外から入る音を緩和するものと、屋内で発する音が外に漏れないようにするものに分かれます。実は、RC・SRC造の壁や床がコンクリートで構成されている分譲マンションは、構造上、壁側から漏れる音よりも窓から出入りする音や床から伝わって響く音の方が気になる傾向にあります。
今まで一般的な防音対策の相談に来られる方は、幹線道路沿いなど「外の騒音」が気になる方が多かったのですが、昨今の情勢による在宅勤務の増加などによって「内から出る音」の対策を考える方も増えてきています」(遠藤さん、以下同)
――そうなんですね。ほかにはどんな方がいらっしゃいますか。
「音楽関係の趣味や仕事をされる方が、最も多いです。楽器演奏者や音楽の先生、作曲や録音をする歌手の方、最近ではYouTuberや声優さん等も。他にもホームシアターなど、自宅で大きな音を出したい方が、隣近所に迷惑をかけないように防音リフォームを検討されています」
――どんな防音対策をご提案されるのでしょうか。
「ご相談いただいた際はまず、防音したい音の種類や予算を伺い、住居の環境を鑑みつつ、最もコストパフォーマンスが良い対策を提案できるよう努めています。相談者は漠然と“防音したい”と考えていますが、必ずしも本格的な対策が必要というわけではありません。例えば、ホームシアターを設けたいとき、多くの方がリビングルームへの設置を希望されます。しかし広いリビングに本格的な防音対策を施すのは、コストが掛かりすぎ、現実的ではありません。住戸の構造や位置によっては、性能の良い二重窓を設置するだけで済むケースもあります。そのため、どのようなことをしたいのか具体的にイメージしていただけると、適切な防音対策が見えてきます」
――防音工事をする際に気を付けなければいけない点はありますか?
「信頼できる業者を選ぶことです。防音工事には、細かな配慮や専門知識が必要です。
一例ですが、防音室をつくる際は、外環境の音を測定します。騒音のある地域(幹線道路沿いや新幹線の線路沿い等)と閑静な住宅地では、音が漏れた際の周囲への影響が異なるので、後者はより気を付けて対策をしなければならないからです。
特に本格的な防音工事は値段も張るので、施工実績のある、信頼できる業者に頼むことが大事だと考えます」
――では次に具体的にどのような防音対策があるのか伺っていきます。
屋外の騒音対策には「二重窓」がおすすめ
「屋外から聞こえる騒音を緩和するには、『二重窓』がおすすめです。二重窓にすると防音以外にも、結露防止、断熱効果による空調効率アップなどのメリットも期待できます。もともとマンションは気密性が高いので、冬でも日中の太陽光で室内が暖まれば、暖房なしで過ごせることも。外窓サッシは建物共有部分のため交換できないのですが、防音ガラスへの変更が可能な場合もあります。
既存の窓サイズに合わせた内窓サッシやガラスを発注するため納品まで少し時間がかかりますが、施工自体は1日で終わるので、お客さま側の負担が少ないのもポイントです」
【二重窓リフォーム】
既存の外窓に厚さ5ミリ以上のガラスの内窓を設置すると、外窓と内窓の間の空気層がクッションとなって音が通りにくくなり、遮音性が高まります。リノベーション費用は窓のサイズにもよりますが、1700×1800ミリの窓で10万円程度の予算感です。(デザリノ調べ)
【防音ガラスへの交換】
防音ガラスは、2枚合わせのガラスの間に特殊な中間膜を挟んだガラスや、合わせガラスの中間層を真空にしたガラスなど、いくつか種類があります。二重窓と併用することで相乗効果が期待できます。また、ガラス自体に紫外線カットなど機能の追加が可能です。交換費用は防音ガラス1平方メートル当たり3万円~6万円が相場のようです。(デザリノ調べ)
振動対策には「床」をリフォーム
「マンションの騒音で最も問題になりやすいのは、人の足音や建具の開閉音など、躯体を伝わって響く音です。これを『固体伝播音』と呼ぶのですが、伝わり方が複雑かつ減衰しにくく、制御が難しいのが特徴です。対策としては、直接床に衝撃が伝わらないようにすること。生活音であれば、床の上にカーペットやマットを敷くだけでも、ある程度緩和できます。
しかし、ピアノや大型スピーカーなど、床に置いて大きな音を出すものについては、相応の対策が必要です。規約でピアノ演奏可能なマンションは多いのですが、何も防音対策をしないで弾くのは、いささかリスクが高いといえます。特にアコースティックピアノは電子ピアノに比べ重量があるため、打鍵音やペダルの音が気になることも。インシュレーターで不十分な場合は床補強を検討し、演奏する長さや時間帯によっては、本格的な防音施工も視野にいれましょう」
【床のリフォーム】
床のフローリングを剥がすため、床材代以外に基礎工事費用がかかります。6畳の部屋を施工する場合の概算費用は以下の通りです。
・防音マット付きフローリングに替える(6畳):18~25万円
・防音マット(6畳):30~60万円
・防振マット(6畳):30~60万円
・グラスウールなどの吸音材(6畳):20~85万円
人の足音などはタイルカーペットやコルクマットなどクッション性の高いカーペットを床の上に敷くだけでも、防音効果を期待できます。敷く面積にもよりますが、1~5万円程度の予算感です。(デザリノ調べ)
壁の防音対策=ほぼ防音室づくり
「界壁にコンクリートが入っているマンションは、よほど壁厚が薄くない限り、壁を介しての生活音透過はあまりないでしょう。これはコンクリートが、遮音性のある素材だからです。
そのため、壁への防音対策が必要なのは、楽器演奏など大きな音を出す場合です。ただ、本格的な防音対策を行うためには、部屋の壁すべてを施工しなければなりませんし、音量や振動の出る楽器・機材の場合は、併せて床施工も必要になるため、費用がかさみます。
そこまでは…という場合は、ワンタッチ防音壁の設置や防音カーテン等の簡易対策が考えられます。アップライトピアノの場合、背面の響板から大きな音が出ているので、響板と壁の間に防音パネルを入れるなどの対策も有効です。」
【壁のリフォーム】
マンションの場合、壁は隣の部屋と接しているので壊すことはできません。そのため、壁の上に防音材を仕込み、その上に壁を新たに設ける工事となります。大抵の場合、併せて床にも防音対策を施すため、ほぼ防音室をつくるのと同じ工事となり、150~350万円の予算が必要です。(デザリノ調べ)
防音室でまるごとリフォームか、組み立て式防音室か
「本格的な防音対策をするには、床・壁・窓・天井をリフォームし、防音室をつくる必要があります。音は様々な場所を伝わって広がるので、防音対策をしていない箇所があると、その部分から音が漏れてしまいます。そのため、一室丸ごと施工をしなければなりません。
しかし転勤の可能性がある方や、将来マンションの売却を考えている場合は、1室リフォームするのをためらうかもしれません。そんな方には、組み立て式の防音室がおすすめです。サイズや性能はさまざまで、箱型のユニットタイプから部屋の形に合わせて自由に設計できるタイプまであります。引越しする際も解体・再組立すれば、次の住居でも繰り返し使えて便利です。」
【防音室にリフォーム】
防音室は、部屋の中にもうひとつ部屋をつくるように、内側に天井・壁・床を設置します。本来の天井・壁・床の間に空気層を設けて、防振材などを埋め込むなどして、音が外に伝わりにくくします。空気層の厚みがあるほど防音レベルは上がりますが、その分部屋のサイズが小さくなるので注意です。工期は2~3週間程度かかり、同じ6畳でも鉄骨・鉄筋コンクリートのマンションであれば230~360万円、音が伝わりやすい木造住宅は280~400万円が相場となります。(デザリノ調べ)
【組み立て式の防音室】
ユニットタイプから自由設計のものまであり、1畳程度からサイズ展開しています。ネット上でも販売しており、自分で組み立てるタイプのものもありますが性能はピンキリです。きちんとした業者で購入すると価格は1畳で70万円弱、4畳で260万円ほどになります。組み立て・解体は専門業者が行うので、組立費・運送費が別途かかりるので注意しましょう。(デザリノ調べ)
見落としがちなのが換気口
「防音対策で見落としがちなのが、換気口です。マンションでは換気口の出口は共用部にあり施工ができないため、室内側で音が漏れないようにする必要があります。防音性の高い換気扇をつける等の対策が必要です」
【換気口の防音リフォーム】
換気口は「ロスナイ」などの防音性の高い換気扇を設置することで防音対策を行います。ロスナイの換気扇は防音だけでなく、室内の保温や換気、外気の汚の侵入を阻止する等の効果も見込めます。換気口の設置の相場は7万円ほどです。(デザリノ調べ)
マンションならではの注意点とは?
「マンションは集合住宅なので、リフォームにあたり気を付けなければならない点が、いくつかあります。
まず、リフォームを行う際は管理組合の承諾が必要な場合が多く、勝手に工事を始めることはできません。マンション管理規約をよく読み、規約に従ってリフォームを行う必要があります。特に床に関しては、使用する床材の遮音等級を定めている場合も多いので、注意が必要です。なお、室内(専有部)の間取りは、構造的に問題なければ自由に変更可能ですが、共有部に手を加えることはできません。
また、そもそも規約で楽器の持込や演奏が禁止となっている場合もあります。この場合は、防音リフォームをしても自由に楽器演奏ができないこともあるため、注意しましょう。」
【マンションならではの注意点】
防音対策に限らず、マンションでリフォームする際は以下に注意しましょう。
- 専有部のリフォームでも管理規約を必ずチェックすること。
- マンション共有部となる玄関(外側)、窓、バルコニーなどはリフォームNG。
- 工事の前には近隣住民への挨拶を済ませるのがマナー。
まとめ
では結局、マンションにおけるベストな防音対策とはなんでしょうか?
遠藤さんは、音を出すシチュエーションや周囲環境によって必要な防音対策は大きく変わるため、個々のニーズを明確にすることが何よりも大切だと話します。
「結構皆さん、最初のご要望はざっくりしているんです(笑) そこから、言葉に表れていない“本当のニーズ”を読み解くことに注力しています。私の強みは、音楽に関する知識や感覚、演奏者ならではの“あるある話”を私自身が持っている点です。だからこそ、他の人では気づかない部分まで、細かくヒアリングできると考えています。
また、一般の方への防音対策提案も、実体験を元にして行うことが多いです。私自身、自宅のリビングルームと寝室で二重窓を採用しており、快適な生活を送っています。お客さまの困り事を解決できるよう、丁寧に耳を傾けることを心がけています」
――遠藤さんは普段、どのようなことをされているのでしょうか。
「私は不動産仲介(賃貸・売買)と防音物件に関するコンサルティングをメインに行っています。賃貸・売買問わず、楽器ができるお部屋や防音室を作れる物件を探してほしい、といったご要望にお応えしております。
個人の売買では、ご要望から必要な防音施工内容を把握し、リフォーム出来そうな物件を『希望エリア』や『予算』に合わせて探す、といったサポートを行っています。リフォームに関する相談は、サービスの一環ですね。私自身は施工業者ではないので、ご相談いただいた際は、私が信頼を寄せる業者を紹介しています。
防音物件に関するコンサルティングは、主に賃貸物件を運営するオーナー様からご依頼いただくことが多いです。防音物件を建てたい方のご相談や、運営する際のルール作り、住人募集など、幅広く承っています。」
楽器ができるお部屋に住みたくなった方は、音楽と不動産双方のプロとして、お客さまの“本当に必要な”防音対策を見極める遠藤さんに、ご相談してみてはいかがでしょうか。
デザリノのデザイナーはプロの目線で、お客さまも気付かなかった不便さを見つけ出し、ご満足いただけるようなリノベーションプランをご提案いたします。気になった方は、ぜひデザリノまでお問合せください。
デザリノについて、3分で分かる資料です。
サービスの特長や事例、完成までの流れをご紹介。
資料ダウンロード
まずはこちらまで、お気軽にご相談ください。
お見積もりまでは無料となっております。
お問い合わせ・お見積もり