「たった5cm、されど5cm」細かな空間設計へのこだわり【デザイナーズファイル No.1 小沼景さん】
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デザイナーの小沼景さんは、大手ハウスメーカーでの設計、リフォーム会社での内装設計を経て、2002年に独立。現在、株式会社デコラホームステージングの代表を務めています。
家のプチリフォームから、店舗リフォーム、大型のリノベーションまで幅広く手掛ける小沼さんは、どのような方なのでしょうか。その人柄やリフォームに対する想いを探るべく、お話を伺いました。
目次
裏方よりもお客さまと直接お話して細かな要望に応えたい
大学で建築を専攻し、卒業後は大手ハウスメーカーに新卒として入社した小沼さん。建築士を目指すきっかけは、プロダクトデザイナーである父親の存在だったと話します。
「父は製品だけでなく、空間づくりにも関わっていました。家にはドラフター(製図台)やマーカー、三角定規などがあり、それを見て育ちました。幼心に間取り図を見るのも好きでしたね。そういったものが身近だったため、強く“建築家になりたい”と志すよりは、自然な流れで“建築”という仕事にたどり着きました」(以下、小沼景さん)
ハウスメーカーに入社当初、希望の設計課に配属され、新築戸建ての設計を担当。大企業のシステマティックな完全分業制により、お客さまの窓口は営業担当者が務め、設計担当の小沼さんは営業を通じて施工主の情報を得るのみだったそうです。小沼さんはだんだん自身の“本当にやりたいこと”とはなにか、考えるようになります。
「当時は完全に“裏方”で、現場には測量に向かっても、実際に図面を起こすのは社内です。家が建っても、遠方であれば完成像を写真でしか見られないなんてこともありました。自分の案件なのに、自分が携わっている実感がないまま終わっていく……。
そんな中でお客さまと直接お会いできる仕事がしたいという想いが募っていきました。ただ、大企業で、ましてや新築戸建ての営業になるには、私は若すぎると感じたんです。お客さまにとって一生ものの買い物で……大げさかもしれませんが、お客さまの人生を背負う責任は私には重すぎると、当時感じました」
小沼さんが選んだ転職先は「リフォーム」会社でした。1990年代後半当時、夫が稼ぎ、妻が家を守るのがベーシックと考えられていた時代、細かな家の内装にこだわりを持っていたのは妻である女性たちでした。
「今は、ご夫婦で相談しながら内装を決められる方が多いのですが、当時はリフォーム分野で主導権を握っていたのは奥様たちでした。それゆえに女性である自分の特性を活かすことができたのです。ちょっとした棚をつくったり、水回りを変えたり、暮らしに直結するリフォームで、お客さまの小さな相談を解決していきたいと思いました。
一方で、建築に関する細かな知識を身に付けたいという考えもありました。ハウスメーカーでの当時の設計は規格型が多く、自由度が少ないんです。設計課が間取りをつくったら、次はインテリアコーディネーターに渡して、カラーパターンの中から提案というのがお決まりの流れでした。もっと現場レベルでさまざまなことに対応できる、細かな知識を身に付けたい!という想いも、転職を決めるきっかけとなりました」
リフォーム実績は約4,500件! 独立後、法人化から建設業許可も取得
リフォーム会社在籍中に妊娠していることがわかり、小沼さんは子育てを優先しようと退職。そんな矢先、以前リフォームを担当したお客さまから別のお客さまを紹介されました。その紹介が独立のきっかけとなったそうです。
「会社を辞めていたので、急きょ個人事業として独立して依頼を受けることになりました(笑) ゆっくり妊婦生活を楽しむつもりが、結局臨月ぎりぎりまで現場に出て……竣工と出産がほぼ同じでしたね(笑) 息子が今大学生で、独立してもう19年になります」
その後、株式会社デコラホームステージングとして法人化し、当デザリノともご縁を持ちました。3年前に正社員を雇用したことをきっかけに、建設業許可を取得し、大規模工事も対応可能に。個人・法人問わず、店舗、オフィス、マンション、アパート、一戸建てと多種多様なリフォームを行っているそう。その実績はリフォームリノベーションだけでなんと約4,500件!になるとか。
2021年から小沼さんは、YouTubeでアカウント「keiチャンネル」を開設して、インテリア・建築・ホームステージングについての配信中! 動画では実際の施工例を見ることもできます。
チャレンジを続ける小沼さんですが、本当は“YouTubeは恥ずかしくて仕方ない!”と本音を漏らしてくれました。
「すっっごく恥ずかしいんですけど(笑) 動画編集の練習をしたいという友人に、“これからは動画の時代だから!”とアツくプレゼンされまして……“もうわかったよー!”と観念して始めました(笑)
今後、リフォームを考えている方が、この動画から施工のイメージや私自身のことを知ってもらえると、安心感や信頼度が増すかなと思っています」
現在も小沼さんはFacebook, Twitter, InstagramなどのSNSでアカウントを開設して情報を配信しています。さらにTikTokのアカウントもあるということで、どんなコンテンツがつくられるか楽しみですね!
たった5cmされど5cm。使いやすさを重視した細かな空間設計
では小沼さんが得意とするのは、どのようなリフォームなのでしょうか。
「設計×インテリアデザインを同時に手掛けることです。その2つは別々の方が担当するのが一般的ですが、どちらもワンストップで伝えらえるのが私の強みです。最近は、設計の段階から、家具やカーテン・壁紙などのインテリアも含めて提案することが多いので、スピード感はあります(笑) なによりも、お客さま自身がリアルに空間を想像しやすくなるという利点もあります。
最近はスマホのアプリを使って、施工前に空間を3Dで再現しています。まるで歩きながら内装を見るように、ウォークスルーの視点で完成像を見ることができるので、お客さまにより具体的にイメージしていただけると思います」
小沼さんは出来上がった図面に決して満足せずに、その設計が果たして本当に使いやすいのかを、施工中に現場でお客さまと検証されるそうです。
「私は細かく空間を考えるのが好きで……。ほんの5㎝、壁の位置がずれただけでも、毎日の生活が変わるので、ずっと考えてしまうんですよね。たとえば“壁と棚の間が80センチ空いていて余裕がありますよ”と口で伝えるのは簡単ですが、実際にそこに立ってみたときに使いにくさを感じるかもしれません。でも5㎝ずれれば不便さが解消されるのでは?という可能性を考えると、現場での確認は欠かせません。
設計だけでなくインテリアにおいても、既製品の家具で対応できない場合は、現場に板を持ってきて、その場でお客さまと一緒に相談しながらデザインすることもあります」
お客さまが暮らしやすく、使いやすくする空間づくりに必要なのは、細かなヒアリングだと小沼さんは話します。設計前の打ち合わせでは、お客さまに撮ってもらったクローゼットの写真を確認して収納量などを把握したり、どの場所にどんなものを置きたいか、使い続けたい家具はないか、などヒアリングしたりするそうです。
小沼さんのそんな細やかな配慮は、リフォーム会社時代に知った“ギャップ”をきっかけに始まったそうです。
「当時は空間の設計だけを請け負っていましたが、まだ経験も浅かったため、施工して引き渡すだけで精一杯でした。お客さまにご満足を頂いていましたが、完成2ヵ月後くらいに担当物件を訪問すると、私が認識していたのと違う家具が入っているケースが多々あって……。ダークな内装にナチュラルウッドのダイニングテーブルがあったり(笑)
もちろん家具の選択などはそこに住んでいるお客さまの自由なのですが、少なからずショックはありました。
そのときに、お客さまと私が、施工中の姿、完成形、その後の姿を同じ目線で見るためには、設計の時点で内装や家具についても言及しなくてはいけない、ということに気付きました。現実にある物量やリフォーム後も残しておきたい家具を最初から設計計画の中に入れて、一緒に考えていこうと思ったのです」
住み心地の良い家の実現は細かなヒアリングから
小沼さんにとって、リフォームの魅力はなんでしょうか。お伺いすると、小沼さんがこだわっているヒアリングするポイントが見えてきました。
「自分好みの間取り、内装にできるのは、リフォームのいちばんの魅力ですよね。ただ、リフォームを考えるときは、広さや間取りよりも“自分や家族がどうやって住むか、生活をしていくか”を考えてみると良いかもしれません。例えば同じ6畳の部屋でも、6畳すべてを部屋として使うか、4畳にベッドのみで残り2畳は収納にするか、どちらが自分にとって快適かは人によって違います」
小沼さんいわく、収納においても、棚を数多くつくれば解決! ではなく、「どこで、どのように使うか」を踏まえて、持ち物の“住所”を決めると、自然と収納場所や量が決まるそうです。
「洗濯においても、あるお客さまは部屋干し派だったので、ランドリー内と窓際に干す場所を増やし、乾いたらすぐ片付けられるようなウォークスルー型のクローゼットを提案しました。
最終的にお客さまに満足いただけるリフォームが、“成功”と考えています。いちばん大事なのは、お客さまご自身の気持ちです。どんなにスタイリッシュな内装でも、実際に住む方が緊張感を覚えるような家は、良くありません。お客さまが生活しやすい、居心地の良い空間づくりを心掛けています。
そのため、ここまで聞く?というくらいに、私はいろいろ確認します(笑) 住み心地良い空間にするために、お客さまとの細かな打ち合わせをさせて頂けるとありがたいです」
細かなコミュニケーションでお客さまの希望を叶えたいという小沼さん。これまでで印象的だった案件を伺ったところ、そちらもコミュニケーションにまつわるエピソードをお話してくださいました。
「大手不動産会社が運営する静岡県伊東市にある民泊を、昭和ノスタルジックというテーマでリフォームしました。そのときに、施工にはコミュニケーションが大事だと、改めて実感しました。私は“せっかち”なんですけれども(笑) 地元の工務店さんが、私のスピード感を理解して対応してくださったので、仕事がやりやすくてありがたかったです。
コミュニケーションがうまくいくと、信頼関係も生まれるので、ご縁がつながっていくように感じられます。1年ちょっと前に引き渡しだったんですけれども、今でも『いつ静岡にくるの?』って連絡があるんですよ。嬉しいですよね」
まとめ
穏やかな口調で丁寧にお話ししてくださった小沼さん。転職や独立のきっかけともなった、“お客さまとお話したい、要望に応えていきたい”という想いは、今でも小沼さんが図面を起こすモチベーションとなっているようです。
理想の住まいはイメージにあるけれども、どのようにしたら良いのかわからない。そんな方は、小沼さんに相談してみませんか? 豊富な建築の知識から、躯体などのハード面、カーテンや照明などの内装、家具の選定などのソフト面でまでまとめて具体化するお手伝いができます。
気になる方はぜひデザリノまでご相談ください!
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